スペイン・バスク地方の豊かな食文化ーバスク・ウィークのセミナーに参加してー【チャコリ編】 2023年12月11日 by travesia with no comment 未分類 バスク・ウィーク 日本で開催されたスペイン・バスク地方のバスク自治州主催のセミナーに参加し、バスク地方の食文化に触れる貴重な機会が訪れました。この記事では、バスク地方の地元のワインであるチャコリと、長い歴史を持つリンゴのお酒シドラ(シードル)、そして独自の料理であるピンチョに焦点を当て、その魅力に迫ります。 2023年10月に東京池袋で開催されたバスクウィーク(*1)では、CAPRICE(カプリス)(*2)とBasque Culinary Center(バスク・クリーナリー・センター)(*3)が共同で、スペイン・バスク地方のアルコールや料理に関するセミナーを主催しました。 "Euskadi"は、バスク語で「バスクの土地」や「バスクの国」を指す言葉 目次 バスク地方の食文化とその重要性 バスク地方は、スペインの中でも食文化が特に豊かで重要な地域の一つです。バスク料理は地元の食材を活かした料理で知られ、その独自性が際立っています。具体的には、新鮮な海産物や地元の野菜を使用した料理が特徴的です。セミナーで紹介されたピンチョは、美味しさと多様性が魅力です。 スペイン・バスク地方はどこにあるの? バスク地方はスペイン北部とフランス南西部に跨る独自の文化と言語を持つ地域です。スペイン・バスクはバスク自治州とナバーラ州の2州で構成され、さらにバスク自治州はアラバ県 、ビスカヤ県 、ギプスコア県 の3県で成り立っています。 ギプスコア県の県都であるサン・セバスティアンはミシュラン星付レストラン、世界一の密集地として名高い美食の街です。そしてこのサン・セバスティアンには世界でも珍しい、「食」を専門に学び、学位の取れる大学「バスク・クリナリー・センター(通称BCC)」があります。今回のセミナーは、バスク・クリナリー・センター(以下BCCと記す)が企画したものです。BCCは世界中のトップシェフを講師として招き、食に関する研究を行っています。その研究対象には日本の発酵技術も含まれています。BCCが美食専門の研究機関として設立されたのは、スペイン・バスク地方の人々が食への深い探究心と情熱を持っていることの表れです。この地域で素晴らしい料理が生まれるのは、恵まれた気候と豊かな土地、長い食文化の伝統、そしてバスク人特有の革新的な精神が相まっているからです。 さて、美食とアルコールは切っても切れないものです。その土地の美味しい食べ物は、その地域の地酒がいちばん合っていて、美味しさを引き立てますがスペイン・バスク地方も特有のお酒が存在します。 「チャコリ(Txakoli)」と「シドラ(Sidra)」 スペイン・バスク地方は、独特の飲料文化を持ち、その中でも特に「チャコリ(Txakoli)」と「シドラ(Sidra)」が有名です。チャコリは軽快で酸味のあるワイン、シドラはりんごを原料とするアルコールで、双方ともにバスク料理との相性が抜群であり、バスク地方で親しまれています。この記事では「チャコリ(Txakoli)」について紹介します。 チャコリ(Txakoli)とは? 定義と特徴:チャコリは、主にバスク地方で生産される伝統的な白ワインです。一部にはロゼや赤ワインのスタイルも存在します。酸味が強く、アルコール度数は比較的低い(通常は9.5%~11.5%程度)。製造地域:三つの主要な製造地域があり、それぞれに原産地呼称(DO)があります:ゲタリアコ・チャコリーナ(Getariako Txakolina)、ビスカイコ・チャコリーナ(Bizkaiko Txakolina)、アラバコ・チャコリーナ(Arabako Txakolina)。ブドウ品種:主にホンダラビ・ズリという白ブドウ品種を使用します。ロゼや赤ワインの場合は、ホンダラビ・ベルツァという赤ブドウ品種が使われることもあります。飲用方法:チャコリは通常、若いうちに飲まれ、そのフレッシュな風味が楽しまれます。独特の注ぎ方で有名で、ボトルを高い位置からグラスに直接注ぎ、泡立ちを促して香りを引き立てます。 チャコリ(Txakoli)の香りの構成 チャコリは、スペインのバスク地方が原産の白ワインです。このワインは、独特の香りと味わいが特徴で、以下のような香りの構成要素があります:フルーティーな香り:チャコリは新鮮でフルーティーな香りが特徴です。主に青リンゴやレモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘系の香りが感じられます。こうした香りは、このワインの爽やかで若々しい特性を反映しています。花の香り:時には白い花や野花のようなデリケートな花の香りも感じられます。これは、チャコリの繊細さとエレガントさを表しています。ハーブやミネラルの香り:一部のチャコリには、軽いハーブの香りや、海の影響を受けた土地特有のミネラルの香りが含まれることがあります。これらは、ワインに複雑さと深みを加える要素となっています。軽い酸味と塩気:チャコリは高い酸度を持ち、時には塩気を伴うこともあります。これらは、ワインの香りを際立たせ、フレッシュで生き生きとした印象を与えます。これらの香りの要素は、チャコリを特徴づける重要な部分であり、特に海の幸とのペアリングにおいてその特性が引き立ちます。一般的にチャコリは、若いうちに飲むことが推奨され、そのフレッシュな香りを存分に楽しむことができます。 チャコリ(Txakoli)の色合い 薄くて明るい:チャコリは一般に、色合いが薄く、透明感があります。淡い黄緑色:多くのチャコリは、淡い黄色や淡い黄緑色の色合いをしています。これは、若くフレッシュなワインの特徴的な色です。明るくクリア:チャコリは非常に明るく、クリアな外観を持つことが一般的です。時には少し泡立ち:チャコリは軽い発泡性を持つことがあり、それにより色合いにもわずかな活気が加わることがあります。このような色合いは、ワインの軽やかさと新鮮さを視覚的に伝えています。 チャコリは三地域の原産地呼称がある チャコリの原産地呼称としては、ビスカヤ・チャコリ、ゲタリア・チャコリ、アラバ・チャコリがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。今回のセミナーではそれぞれの原産地呼称を代表するチャコリが紹介されました。 セミナーで紹介されたビスカヤチャコリ、ゲタリアチャコリ、アラバチャコリ セミナーでチャコリとシドラの試飲、写真左側3グラスがチャコリ。色合いが淡い。 ビスカヤ・チャコリ 産地: ビスカヤ地方(ビスカヤ県)。特徴: ビスカヤチャコリは、さわやかで酸味があり、シトラスフルーツの香りと味わいがあります。通常、若いうちに飲まれ、アルコール度数は比較的低めです。葡萄品種: ヒリダナ、ゴロティカ、オンドリュア、リオアといった地元の葡萄品種が一般的に使用されます。 Itsasmendi 7テイスティングノート 色合い:金色がかった黄色。香り:果物(特に桃や杏)と柑橘類(グレープフルーツ)の香りが中心で白い花の香りと共に低木やカモミールのタッチ、そしてわずかな鉱物質のニュアンスが感じられます。味わい:口当たりは滑らかでリッチであり、新鮮な酸味があります。エレガントで繊細な味わいです。風味のバランス:酸味と苦味のバランスが良く、植物的なノートがフレッシュさを加えています。 ボトル熟成が可能な珍しいTxakoli スペイン・バスク地方のチャコリは若いうちに飲むのが理想とされることが多いですが このビスカヤ地方の「Itsasmendi7」はボトルの中での熟成に耐えうるように製造されている、珍しいチャコリです。。 ゲタリア・チャコリ ゲタリア地方は海岸に位置し、海風の影響を受けたワインが特に有名です。 海のそばのワイナリー 産地: ゲタリア地方(ゲタリア県)。特徴: ゲタリアチャコリは、ビスカヤチャコリと同様にさわやかで酸味がありますが、よりミネラル感が強調され、柑橘類の風味が豊かです。この地域では、海の近くにある葡萄畑が多く、海風の影響を受けたワインが生産されます。葡萄品種: ヒリダナ、ゴロティカ、オンドリュア、リオアといった葡萄品種が一般的です。 Txakoli Blanco MOKOROA テイスティングノート 色合い:薄く、透明感があり、明るい黄色で、緑がかったレモンの色合いがあります。香り:強いフルーティーな香りが特徴で、桃、リンゴ、新鮮な草の香りがあり、また、ある程度の花のニュアンスも感じられます。味わい:フレッシュでバランスが取れており、独特な苦味があります。口の中での存在感があり、長く続く味わいです。風味のバランス:さわやかで、過度な酸味はなく、バランスが良く、丸みを帯びた風味で、口の中でボリュームを感じさせます。喉にはホンダラビ・ズリ品種特有の苦味が現れます。 アラバ・チャコリ 産地: アラバ地方(アラバ県)。特徴: アラバチャコリは、他の地域のチャコリと比較してやや異なり、アプリコットや桃のような熟したフルーツの香りや味わいがあり、通常はより糖度が高く、アルコール度数も高めです。ボディ感も他のチャコリに比べて豊かです。葡萄品種: ホンドャリバ、グロッタ、フルナリャ、ゴルバリャなどが使用されます。 OSTATU BLANCO 2022 テイスティングノート 色合い: 淡い黄色で、明るく、緑がかった色合い。香り: 柑橘系と白い果実(青リンゴ、洋梨)の香りがあり、花やわずかにハーブを思わせる香りがあり、品種の表現が非常に繊細。味わい: バランスが良く、塩気のある酸味、フレッシュで贅沢な味わい。わずかにオイリーな印象も。風味のバランス: 青リンゴとレモン、完熟したグリーンゲージプラム、白い花が主要な風味。 最近のチャコリの傾向は酸味と泡が少ない セミナーでは上記のビスカヤ・チャコリ、ゲタリア・チャコリ、アラバ・チャコリとスペイン・バスク地方で代表的なチャコリを試飲しました。チャコリというと酸味があり、少し発泡しているのが一般的なイメージです。どのチャコリもフレッシュで若々しく香り高かったですがイメージするほどの酸味は感じませんでした。セミナー講師によると最近は昔よりも酸味や発泡を少なくしているそうです。逆に、シドラは酸味が際立っていました。チャコリとシドラを同時に試飲するのは初めてでしたが、互いの特徴と魅力が際立ちとても興味深かったです。ご興味のある方はぜひ、チャコリとシドラをどちらもご用意して飲んでいただけると、より双方を愉しむことができ、お料理とのペアリングについても新しい発見があるかもしれません。 (*1)バスクウィークについて文化や美食の活動を通じて、日本にスペイン・バスク地方を紹介することを目的とした1週間。屋内活動に加え、街頭活動も幅広く行われます。(*2)CAPRICE(カプリス)CAPRICEプロジェクトは、第三国市場での農産物のプロモーションを目的としています。具体的には、ヨーロッパ連合の農産物を宣伝し、消費者に情報を提供することで、市場内での販売を促進することを目的としています。(*3)Basque Culinary Center(バスク・クリーナリー・センター)バスク・クリナリー・センター は、2011年からスペイン・バスク地方のドノスティア-サン・セバスティアンに設立された、美食と栄養学の高等教育、研究、革新、普及を主な目的とした世界でも先駆的な学術機関です。 Previous Post マロラクティック発酵は行わない。伝統的なのに斬新なシードル Next Post スペイン・バスク地方の豊かな食文化ーバスク・ウィークのセミナーに参加してー【シドラ編】