イギリス・オーガニック・シードルの最高峰 – 1本のりんごの⽊から始まる物語 2022年4月11日 by travesia with no comment ダンカートン (イギリス) 1本のりんごの⽊から始まる物語 この物語は、1980年、BBCで⻑年ドキュメンタリー番組制作に携わってきたアイバー・ダンカートン⽒が、家族と共にロンドンを脱出するところから始まる。敏腕プロデューサー兼ディレクターであったダンカートン⽒は、あろうことか、⼭⽺3頭、⽜2頭、豚2頭、⽺20頭、ロバ1頭を購⼊してほどなく、BBCに辞表を突きつけたのだった。妻、そして⼆⼈の多感な10代の息⼦達、そして90歳にもなる⺟親を引きずって、イギリスの⽚⽥舎であるヘレフォードシャーのペンブリッジ近くの⼩さな家に移り住んだ。当初は、牧畜で⽣計を⽴てようとの計画だったが、⾁を売るにも、お乳を絞るにも⾜らず、家畜達は共に暮らす家族以上の役割を果たさなかった。頭を抱えたダンカートン⽒だったが、ふと畑に⽬を向けてみた。たった1本のりんごの⽊が、ポツンと寂しそうに佇んでいたのだ。「りんご…そうだ、りんごだ!」 ⼟を取り戻す ヘレフォードシャーという⼟地には、豊かな果樹園がそこかしこにあり、歴史的にシードルづくりが⾏われていた。伝統的なシードルは、りんごそのものを天然の有⽤微⽣物で発酵させてつくる発酵⾷品だ。ところが、その当時は、濃縮果汁や添加物、砂糖を使う、いわば「⼯業製品」のような飲料を作る業者がほとんどだった。たった1本のりんごの⽊は、もはやダンカートン⽒の⽬には、多様な⽣物が⽣かし合う豊かな果樹園としか映らなくなっていた。「畑の⼟を、⽣きた⼟に戻そう。多様な微⽣物と野⽣動物達、植物、そしてりんごが⽣かし合う果樹園から、伝統的なシードルを再⽣しよう」オーガニック栽培は難しいと⾔われているりんごだが、ダンカートン⽒の粘り強い性格と研究魂が、諦めを許さなかった。伝統的な地元産のりんご品種を選び、栽培にも⽣産にも⼀貫して農薬や化学肥料などの化学物質の投⼊を排除した。ダンカートン⽒は、⼟こそが良いりんごを作ることを知っており、当初から「⼟壌協会(soil association)」のメンバーになり、厳格な基準を守りながら、独⾃の栽培⽅法を探求していった。 ⼟と⽣命の交響曲 農薬や化学肥料を使わず、⼟壌を豊かにする微⽣物が⽣き、⾃然の循環が起きた畑から収穫されたのは、りんごだけではなかった。⼟を掘り起こすとうごめく⾍達や花粉を運ぶ蜜蜂の⽻⾳。⼟に栄養を補給し、決して「雑草」などとは呼べない植物や⾊とりどりの花々。卵を産みに来る⿃達や草を適度な⾼さに⾷んでくれる動物達。そして、りんごを収穫するダンカートン⽒と妻のスージー、そして仲間達。ここでは、あらゆる⽣命が、⼟を真ん中に新たな⽣態系を形成していた。何⼀つ無駄はなく、全てが⽣かし合い響き合い、歓喜と共に、命の交響曲を奏で始めたのだった。 ⼟ごと飲む、シードル ダンカートンシードルを通して、私たちは、⼟を飲んでいる。りんごの⽊がみずみずしく豊潤なりんごの実をつけるには、⼟の豊かさが⽋かせない。⼟は、その⼟の上に暮らす植物や動物などの有機物を、⾍が分解し、⼟壌の微⽣物が発酵させることでできている。りんごの⽊は、⼟に根をおろすことで、微⽣物が⽣み出した栄養分をぐんぐん吸収し、健康な果実をつける。彼らは、りんごを⼿摘みではなく、あえて地⾯に落としてりんごを収穫する。何故ならば、彼らの⼟には、多様な有⽤微⽣物が⽣きていて、シードルづくりにとって⽋かせない⽴役者だからだ。りんごの発酵には、最も酵⺟特有の⾹りのクセがないシャンパーニュ酵⺟を使うが、⼟に落ち、⼟地特有の微⽣物を纏ったりんごは、その⼟地独特の⾵⼟を奏でるシードルになるのだ。シードルを飲むことで、私たちは、その⼟地の⼀部を取り込み、⽣態系の⼀部となる。ダンカートン⽒は、83歳にして⾻⾁腫で息をひきとることとなる。妻スージーも程なく引退し、今は、息⼦のジュリアンが家業を引き継いでいる。ダンカートン⽒が⽣み出した新たな⽣態系は、イギリスで最も尊敬されるオーガニックシードルを通じて、今も絶え間ない循環を保ち、⽣き続けている。 ダンカートン・オーガニック・シードル・ドライ<辛口>(発泡性7.0%)渋みや酸味がはっきりした5種類のリンゴをブレンドし、7.0%という、しっかりとした飲み応えの辛口です。 世界最大級シードルコンテスト、2年連続で金賞を受賞。 甘みを排した、キレのある、芳醇な香りが特徴。 スッキリした香りの後に、重厚なリンゴの果実味と渋みが広がる、優しくも力強い味です。 ダンカートン・オーガニック・シードル・ブラックフォックス<中辛口>リンゴ10種類を使った、ダンカートンを代表する中辛口のブレンド。果肉の甘みと皮の渋みが重層的に広がり、優雅な余韻を残します。 圧倒的な果実味が特徴の、英国シードルの伝統に忠実なシードルです。 ダンカートン・オーガニック・シードル・プレミアム <中甘口>(発泡性6.8%)やや甘口の仕上がりですが、渋みの少ないリンゴに、キレの良い後味のリンゴを加え、甘さだけではない濃厚なシードルに仕上がっています。 皮のかすかな苦みをも含めた、果実をダイレクトに感じさせる官能的なブレンド。天然果汁から来る複雑で豊かな香りだと実感させてくれる逸品です。 イギリス ダンカートン・オーガニック・シードルについて詳しくはこちら関連記事:イギリス・オーガニック・シードルの最高峰 – 1本のりんごの⽊から始まる物語工業製品のようなシードル?世界最大の生産量イギリスのシードル Previous Post バスク地方のシードルの原料 – バスク地方の醸造用リンゴは渋くて食べられないって本当? Next Post 新世代のフランス生産者たちの挑戦 – SASSYシードルの創業者たち