天然酵母の発酵にはリスクもはらむ
破砕した果実には天然酵母が含まれ、放っておいても、果汁が発酵してシードルができます。天然酵母は驚くほど多様なため、素晴らしく複雑なシードルになる可能性を秘めている一方で、失敗作になる可能性も少なくありません。発酵の謎が解明されていないことも少なからずあり、常にバクテリア混入による汚染リスクをはらんでいます。
このため、天然酵母を除去し純粋培養酵母に変えて、より健全に発酵させる手法があります。ワイン酵母とシャンパン酵母は、シードルに使用される最も一般的な酵母です。
科学的に管理した状況下では数日で発酵させることも可能ですが、職人気質のシードル生産者なら、低温で数ヶ月はかけてゆっくりと発酵させます。一部の伝統的な作り手は、シードルはタンクの中で発酵を始めると、出来上がるまでそっとしておくべきだと考えています。
しかしながら、酵母が健康健全でなかったり、養分が不足したりすると、発酵がうまくいかず、かび臭い、卵が腐ったような、匂いを発することもあります。
そのため、常に発酵を監視し、要所要所で味見し、酵母に養分が不足していると判断したら、栄養分を足してやる生産者もいます。この作業自体は昔からありますが今日では、果汁に糖分が少なければ糖や酵母専用の栄養剤を添加してある程度コントロールして製造されています。